石油はどのように汲み上げられるのか?


《石油はどのように汲み上げられるの?》

― 岩石の孔隙中の石油をどう効率よく取り出すか ―

石油は岩石の孔隙中に存在しており、食器を洗うスポンジの中の水によく例えられます。決してプールに存在する水のようにある空間に満ち溢れているわけではありません。種類にもよりますが岩石の孔隙の割合は10~40%程度です。また、孔隙中の石油の割合も様々で、最低でも10%程度は水が含まれています。このような状況で石油を効率よく経済的に生産することは単純ではなく、油田の特性に応じ、計画を慎重に練る必要があります。

最も重要なのは石油を生産するための坑井をどこに何本掘るかです。少なすぎては石油を多く取り残しますし、多すぎては坑井を掘削するための費用がかさんで経済的に見合いません。もちろん、石油を含んでいる量が少ない地域・深度に掘削しても意味がありません。また、1本の坑井からできるだけ多くの石油を生産するため、油層部において水平方向に掘削するようなことも日常的になりました。

基本的に石油は油田のエネルギー(圧力)によって地表に噴出してきます(一次回収)が、坑井の周辺では大きな圧力の損失が起こるため、それを改善して油が流れやすくするように、酸(塩酸等)を圧入して、流路にあたる岩石の一部を溶かしたり、人工的に亀裂を生じさせたりすることもあります。また、非常に重質な石油の場合や生産される石油に水が混ざってきた場合には、全体の密度が大きくなるため、地表まで汲み上げることが困難になってきます。この場合には坑井内にポンプを設置して人工的に汲み上げる、あるいはガスを圧入して相対的な密度を小さくして噴出を促すようなことも行います。

残念ながら、このような努力・工夫にも関わらず、回収できる石油の量は全体の3分1程度です。即ち、3分2程度の石油は取り残されてしまうことになります。この取り残し分を回収するために、水、ガス、薬品等を圧入することがよく行われます。

基本的に石油は圧力によって地表に噴出してくるが、約3分2は取り残されてしまう。そのため、水、ガス、薬品等を圧入してこれを取り出す。

《水や微生物を使って石油を回収する》

石油の二・三次回収

油田が元々持っていた自然の圧力だけでは全体の量の3分2程度は取り残されてしまいます。この第一の要因は、生産が進むにつれて油田の油層圧力が低下してしまうことによるものです。即ち、地表まで石油を噴出させるエネルギーを失っていくことによるものです。そこでこの圧力を補うために、生産した石油の分だけ、逆に何かを油層に圧入する必要があります。ここでよく使われるのが、水や天然ガスです。特に水は比較的に安価に入手できることから広く利用されていますこのように人工的にエネルギーを加えることでさらに石油を生産することを二次回収と呼びます。

油田の性質によっては、圧力を維持するだけでは十分な石油の回収量を得ることができない場合もあります。例えば、石油の流動性(粘性)が極端に低い場合、加熱したり、ガスを混和させたりすることにより、流動性を改善します。前者についてはスチームの圧入、後者については二酸化炭素ガス(CO)や天然ガスの圧入がよく利用されています。また、油層中に存在する水が物理化学的な力(界面張力、毛細管圧力等)により油の動きを邪魔することも起こりえます。この場合は、界面活性剤等の薬品や微生物等を油層に圧入することによって改善が試みられます。このように、物理化学的な性質を変化させて石油を増産することを三次回収と呼んでいます。

最近では、油田の開発に際して地下に存在する量の内、地上に取り出せる量の割合を表す回収率の最大化を計るため、開発当初から二次回収法の適用を検討する例も増えています。回収率は油層内の油を坑井に向かって持続的に流動させる機構である排油機構や油層性状等によって大きく異なりますが、二・三次回収の適用により50%以上の回収率を達成できそうな油田も珍しくなくなりました。

●人工的にエネルギーを加えることでさらに石油を生産することを二次回収と呼び、物理化学的な性質を変化させて石油を増産することを三次回収と呼んでいる。表カナダ・ウェイバーン油田の生産量推移(背景無) (2)

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