原油基礎知識


<原油価格>

原油価格の代表的な指標にはこのWTI、欧州産の北海ブレント、中東産のドバイがあり、これらが世界の3大原油指標と言われています。

その中でも、WTI原油先物は、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性が高いため、原油価格の指標にとどまらず、世界経済の動向を占う重要な経済指標の1つにもなっています。

WTIの先物はウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、西テキサス地方で産出される硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油のことを指します。そのWTIの先物がニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されています。

 

<世界の石油消費と埋蔵量>

BP Statistical review 2008 をもとに、AFPがまとめた確認石油埋蔵量では、2007年末現在、中東が7553億バレルで最多、欧州/ユーラシアの1437億バレル、アフリカの1175億バレル、中東米1112億バレル、北米693億バレル、アジア太平洋408億バレル。

 

<バレル>

バレル(バーレル、barrel)とは、ヤード・ポンド法における体積を表す単位である。国際的に原油や各種の石油製品の計量はバレルで行われる。語源は「樽(たる)」である。

石油用のバレルは42米液量ガロンであり、正確に158.987294928リットルである。42ガロンのバレルは、元々はアメリカのペンシルベニア油田で始まったものである(42ガロンの鰊樽に石油を詰めて運んだため)。ペンシルベニア油田では42ワインガロン(ワインガロンは現在の米液量ガロンと同じもの)のバレルと40ウィスキーガロン(約151.4リットル)のバレルとが用いられていた。40ガロンのバレルの方が最初に普及したものであったが、1866年以降は42ガロンのバレルが標準とされた。石油は長年樽に入れて運ばれていたため、その名残で今日でも原油の計量と価格設定の単位にバレルが使われているのである。

 

<世界の石油消費> 2007年調べ

北米25.024億バレル、中東米5.493億バレル、ユーラシア大陸20.100億バレル、アジア・太平洋25.444億バレル

 

<原油先物価格WTIとは?>

WTI、原油のニュースで耳にするけど?

WTIとは、世界的に注目される原油価格の指標で、ウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略です。ニューヨークのマーカンタイル(商品)取引所(NYMEX)で取引されている、原油価格の先物です。この先物の動きが世界的に原油価格の指標として注目されているため、原油価格のニュースなどで取り上げられているという事なのです。

WTIは米国テキサス州で産出される原油でガソリンを多く取り出せる硫黄分が少ないので、品質が高く人気があります。暖房の燃料やジェット燃料などにも使われる付加価値の高い上質の原油です。

そのため、WTIは原油価格の先物取引の1つであるものの、それだけに留まらずに、原油価格の代名詞とも言ってよく、さらに世界経済の重要な経済指標の1つという位置づけにもなっているのです。これを先物取引の原油商品として売買する市場としては、ニューヨーク・マーカンタイル取引所の他に、北海原油を標準とするロンドン国際原油取引所(IPE)、中東ドバイ産原油を標準とする東京工業品取引所(TOCOM)があります。

 

<ニュースでよく言う原油価格とは?>

一般にニュースなどで「1バレル=○○ドル」などと伝えられている原油価格とは、実際の原油を購入する際のスポット価格のことを言っているのではありません。先物の原油価格のことなのです。先物取引とは前述のとおりバーチャルの取引で、実際にほとんどのケースでは原油そのものをやり取りするわけではありません。原油価格としてニュースで伝えられている価格は、一般にニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTIという先物価格のことなのです。先物取引には実際の買い物だけではなくバーチャルな投機的な資金が入ってくるために未来の原油需要以上の影響が価格を大きく動かします。現在では新興国の発展に伴う、原油の需要も確かに高いのですが、それ以上に投機資金による原油価格の変動も大きいのが現状です。現在の原油価格高等は投機資金の対策として原油が注目されていることが背景の1つです。今後、原油に代わる投機資金の魅力的な運用先が出てくるようなら、少しは原油価格の高等が抑えられることにもなるかもしれません。

 

<なぜガソリン価格が上昇したのか>

今、ガソリン価格がなぜ下落したのか?を知るには、まずなぜガソリン価格が上昇したかを知る必要がある。これはひとえにガソリンを作る元となる原油が値上がりしたから。では原油が値上がりした理由はなんだろうか。いくつかの理由が考えられるが、おおよそ次のような複数の理由が重なって大きく値上げしたと考えれば良いと思う。

・中国やインドなどの中興国の消費増大

・オリンピック需要

・生産国の政情不安定化による供給量減少

サブプライムローン問題などで景気が怪しくなってきた株式市場から逃げた投資マネーが商品先物市場に流れ込み、それらが先物先導で値を吊り上げた。

 

特にここ1、2年の間の価格急騰は一番最後の原因に寄るところが大きい。実際2007年70ドル前後だったのが、同年12月には100ドルまで達しており他の要因ではここまで急な値上がりはしない。上から3つまでの理由も投機マネーによる買い付け、価格上昇を裏付ける理由になるのだから始末が悪い(つまり中国やインドの需要が伸びるらしい=原油のニーズが高まる奪い合いになる値が吊り上がるだろう。ならば先手を打って、買っておけば儲かるという理由付けが出来る)。

 

<なぜガソリン価格が下落したのか?>

上昇理由を考えれば下落理由も自ら分かるというもの。似たようなスタイルで並べていくと次のようになる。

・オリンピックの集結による特需打ち止め

・ガソリン価格高騰に対する買い控えで需給のバランスが崩れた

・世界的な景気後退による節約志向の高まり。それに伴う原油商品の消費量減少

・商品先物市場の規制強化

商品先物を取り扱っているファンドなど下の契約解除や株式などの損失を穴埋めするために現金が必要となったための換金化

 

値段が割高になれば消費量を抑えようというのは世の常。ガソリン価格が高等したことで自動車の利用を控えたり自動車そのものを売り払ったり、燃費の良い車両に買い換えるなど、ガソリンの消費そのものが抑えられる傾向が強まった。

先物市場で大暴れをした原油価格過去最高値147ドル。ガソリンでリッター200円。単にガソリン高だけでなく景気そのものが悪化することでガソリン消費が減少し需給バランスが崩れていく。

現在は「本来の姿」に戻りつつあるわけだ。原油価格の今後は、下は70ドル、上は150ドルというブローカーのコメントが寄せられている。「受給による純粋な原油価格は80ドル前後」という話も語られていた。

ここに面白いニュースがあったので紹介します。

国際エネルギー機関が原油価格243ドルの衝撃的予想を発表!

日本ではあまりニュースになっていませんが国際エネルギー機関(IEA)は2010年11月9日2035年までのエネルギー需給を予測した「世界エネルギー未投資2010」を発表しました。この予測によると世界の一次エネルギー需要は2035年に2008年比で「+36%」増加し、その需要増分の大半を新興国が占めると予測されています。

実際に中国の原油純輸入量が毎年激増している状況を見ると、この予想は整合性がありそうです。そして2035年になってもエネルギーの大半は化石燃料であり、風力・太陽光などの新エネルギーが全エネルギーに占める割合は数ポイント現在より上がる程度です。結論的に政策が現状維持で推移すると、2035年時点の原油価格は1バレル=243.8ドルという衝撃的な予想となっているのです。実際のところ、IEAのこの超長期の予想とは別に、米国の追加金融緩和策によって資源価格は後押しされており、原油価格も最近では25ヶ月ぶりの高値を取ってきています(ただし現在は若干調整しています)。

原油価格は金融危機後にダブルボトムを打ってから2009年に反発後長らく値固めしてきました。どちらかというと貴金属や農作物が先に高値を更新していったのに比べ、ここまでの推移は穏やかです。現在は最後の売り圧力を振り切り、高値を伺おうとしている現状ですが90ドルラインは過去の節目とも一致する重要な線となります。

移動平均線も200日線、50日線が絡み合っており、ここを突破すると強力な上昇トレンドを形成する可能性があります。実際のところ、これまでも商品相場は謹賀まず先に動いてから原油へと移ったことが何度かあります。米国は積極的な金融緩和先を採っていますが、金融危機で負ったダメージは想像以上に大きく負い、それと景気は回復しそうにありません。つまり緩和策は未だ続くということです。そうなれば大量のドルが、ばら撒かれますから、ドル安になります。ドルと商品は反相関関係にありますので、商品価格は長期的な超勢として上昇して行く方向にあると思います。となれば、原油価格は今後上昇していく可能性は高いと考えます。原油価格の上昇はガソリン価格の上昇など、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。石油関連製品の上昇に耐えられるように、原油株を買うなど、石油価格の上昇で資産が拡大する仕組みを作っておくことは1つの生活防衛策でもあると思います。

先日、QE3 金融緩和3回目です。効果が上がるまで、米国は金融緩和をやり続けます。そろそろ効果が上がることを考えれば、商品相場が上がると思います。まず金相場が上がってきました。昨年高値1900ドルから1500ドルまで下落した金相場。現在1800ドル。原油も現在80ドル台と昨今の脱原発日本だけでなく、全世界的になっていることを思うと価格の上昇はさけられないと私は思います。

 

<石油需給ファンダメンタルズ>

昨今の石油価格の上昇は様々な要因が複合的に作用することによって、引き起こされています。その中出も最も大きな要因として挙げられるのが、世界の石油需給の逼迫です。1991年から2000年までの10年間の平均経済成長率が3.4%であったのに対し、2003年以降は4%を超える経済成長が続いており、歴史的に見ても世界経済が非常に好調な状態を維持していることが分かります。そして、この好調な経済を背景に世界の原油需要も増え続けています。経済活動が活発になれば製造業を始めとする、産業用や電力用の燃費としての石油需要が増え、また、物流や人の移動が多くなり、輸送用の燃料としても石油の需要が増加することになるからです。世界の石油需要の動向で地域別に特にアジア太平洋と北米地域を中心に石油需要が堅調に伸び続けてきていることです。とりわけ、この世界の石油需要増大の牽引役とも言えるのが中国と米国です。

1991年から2000年までの主要国における(G.7.・BRICs国)世界の需要増加分(1691万バレル/日)中国と米国で(880万バレル/日)は同期間の増加分のほぼ半分に相当します。このような需要の増大が続く一方で供給面では、石油の余剰生産能力は長期的に縮小傾向にあります。

OPECが保有する余剰生産能力は1980年から1990年代にかけ、大きく縮小し、2000年代に入っても300~400万バレル/日程度の水準で推移し続けています。石油生産面での余力の低下と併せて、石油精製の面での余力の低下も進んでいます。また、石油需要が増加する反面、世界の石油依存はますます中東依存度を高めています。1991年から2006年にかけての、地域別の石油生産量を見ても需要側では先に書きましたが、アジア太平洋と北米地域において大きく伸びましたが、供給側ではこの地域における生産量の伸びは大きくなく、それ以外の地域における増産によって、需要の増加が賄われてきたことが分かります。北米欧州といった、いわゆる先進国地域での生産量が減退ないし伸び悩みの傾向で、それに対し、ロシアと中東、アフリカからの供給増が圧倒的に大きくなっています。このような傾向は今後も続くとみられており、世界の原油供給における、中東、アフリカ、ロシア地域への依存度はこれからも高まっていくことが確実視されています。

これらの地域の石油は、大半が国営企業の管理下にあり、市場ニーズに応じた柔軟な投資環境整備が求められています。このように石油需要全体が増加する反面、供給制約が益々高まることが見込まれますが、地球環境問題への関心の高まりから、石油製品における硫黄分などの成分に対する規制も世界的に厳しくなる方向にあります。

このような石油製品の高品質化、軽質化が進む一方で、世界の産出原油は重質化する傾向が見られます。石油製品の需要構成からはより軽質から高品質な原油が必要とされているのに対し、世界の産出原油はより重質かつ品質が劣る原油の比率が大きくなっていくという現状が存在するということです。今後このようなことを解消していくためには重質の原油を軽質の原油製品へと精製することのできる、高度化精製装置への投資が必要になります。従って、そのような精製部門での装置対応が今後順調に進んでいくかどうかという点も今後の石油製品の重要なポイントになります。

増大する世界の石油需要に見合った供給を確保するためには、現在生産を行っている油田の生産減退分も補った上での増加を進めていかなければならない為、新規の生産能力増強自体は、これからの需要増加分以上の水準を達成していかなければなりません。また、近年大規模油田の発見がなされていないため、今後の生産能力の増強は現在生産を行っている油田よりも小規模の油田を数多く開発していかなければならず、より多額の投資が必要となります。

今後、低コストで生産できる油田開発が可能な投資が行われる必要があります。低コストで生産できる油田地域はサウジアラビアやイラン、イラクといったOPEC産油田に集中していますが、例えば、イラクやイランなどにおいてはそれぞれ国内政情や国際政治面での緊張の高まりから投資が進められていないのが現状です。

需給の逼迫と併せて近年の原油価格高騰の大きな要因となっているのが「地政学的リスク」です。この地政学的リスクという言葉は、様々な文脈で用いられていますが、一般的には「戦争や内乱、油田国有化のように政治的な事象によって引き起こされるものであり、かつ比較的短期に油田供給を減少させる可能が懸念されるリスク」を指すものとして使われます。地政学的リスクが中東地域のみならず、アフリカ最大の産油国であるナイジェリア、南米最大の産油国であるベネズエラなど地理的にも広範囲に亘り、かつ同時にその深刻さの度合いを増してきている点が挙げられます

中東においては、2003年のイラク戦争以降、若干の治安情勢の改善は見られているものの、現在のマリキ政権が依然として国内の各宗派間での対立を十分に生後しているとは言い切れず、今後も本質的には不安定な政情が続くものと考えられます。2007年後半に顕在化したトルコ国境付近における緊張関係も今後の動向次第では新たな軍事的な衝突に繋がる懸念も拭いきれていません。イランについても2007年米国政府がイランの核兵器開発は2003年以降停止されたが、いらんが少なくとも核兵器を開発する選択肢を維持し続けているとの評価を行いました。イラン国内では引き続きウラン濃縮関連活動は続けられており、欧米諸国との緊張関係が続いています。

ここにまた面白いニュースがあったので紹介します。上記と重複しますが「2012年3月21日AFP」国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は20日、イラン産原油の供給が断たれると、原油価格は最大30%上昇する可能性があり、世界経済の「深刻なリスク」になる恐れがあると述べた。

世界第2の産油国であるイランは核兵器開発疑惑をめぐって、西側諸国と対立しており、現状次第で原油価格が急上昇する恐れがあるとみられている。中国訪問に続いてインド入りしていたラガルド専務理事はインド訪問を終えるにあたって、ニューデリーで記者会見し「イランの原油輸出量が大幅に減少した場合、世界経済への打撃は明らかに大きく、当分の間、原油価格の上昇を招くだろう」と述べた。IMFはイラン産原油の供給が停止した場合、原油価格は20~30%上昇すると試算していると語った。同専務理事は、原油価格の指標となっているブレンド原油1バレル125ドルから急激に上昇すると、ほかの産油国が穴埋めできるようになるまでは、「世界経済に深刻な影響があるだろう」と述べた。

今まで原油価格の仕組み、流れ、トレンドといろいろ述べてまいりましたが、原油価格は適正価格に近づいてきたと私は思います。今後の価格の動きを楽しみに見ていきたいと思います。