石油製品ができるまで


≪石油製品ができるまで≫

開発権の獲得から消費者に届くまで様々な国や企業が関わる

●原油からは、多岐にわたる石油製品がつくりだされる。

●特定の製品だけをつくることはできず、需要と供給の最高の適合性を求めることがむずかしい。

<石油製品のすべては連産品>

身近にある石油製品は、原油を精製する過程でつくられる連産品の数々です。たとえば、車に使用するガソリンも、原油を精製する過程でつくられる製品の一つですが、同時にいろいろな石油製品がつくりだされてきます。

現在は、最新の設備と技術で、限りなく販売の需要に見合う品質と量が製造されるよう、いろいろな対策が講じられていますが、残念ながら、特定の石油製品だけを精製することはできません。需要と供給の最高の適合性を求めるには、連産品産業であるがゆえのむずかしさがあります。

石油産業のしくみは少々複雑なので、我われが日常手にする石油製品はどのようにつくられているか、簡単な流れを示してみました。

【原油から石油製品になるまでの流れ】

開発権の獲得→原油の探鉱→(発見)→試掘→埋蔵量の評価→可採埋蔵量の確認→最適な原油開発計画→原油の生産活動→輸入国(各石油会社)への輸送→備蓄基地、各石油会社製油所で受け入れ→各石油会社で精製、製品化→国内製品基地へ転送→各地区販売拠点に輸送→小売店→消費者(または→需要家工場)

石油産業の活動範囲は、世界的な規模で、上記の各段階にそれぞれの国と企業が存在するメガ・マーケットとなっています。日本の石油産業も、各段階で、各石油会社が活動する広範囲な事業です。1リットルのガソリンも、こうした過程を経てつくりだされたものです。

原油からは、実に多岐にわたる石油製品がつくりだされます。

【バレル】もともとは英語の樽という意味。1バレルは約159リットル。原油の埋蔵量、生産量、精製量、原油単価等の単位を表す用語として、石油業界では、頻繁に使われる。

 

国際石油産業のしくみ


≪国際石油産業のしくみ≫

少数の国際石油資本や資源国が世界市場を動かす

●日本の石油産業は下流部門が中心。

●OPECと非OPECは話し合い路線へ。

<アップ・ストリームとダウン・ストリーム>

国際石油市場を語る際によく用いられる用語にアップ・ストリームとダウン・ストリームがあります。日本語では、開発権の獲得から、原油の探鉱、開発、生産までの事業範囲を上流部門、原油の輸送から、精製、石油製品の販売までを下流部門と呼んでいます。

石油会社は、基本的に上流部門だけの事業会社、下流部門だけの事業会社、上流部門から下流部門までの一貫操業会社と、3タイプに分かれます。日本では、業界最大規模を誇るJXグループが一貫操業系の会社であり、開発専門会社もグループ子会社に存在しますが、次項で説明する欧米メジャーのアップ・ストリームの規模とは比べ物になりません。

日本の石油産業は、敗戦国として海外進出がむずかしい時期が長かったので、下流部門が中心となっています。

<メジャーズとOPECと非OPEC>

米国で生まれた石油産業は、1870年代にその姿を整え、以来百数十年を経て現在の国際石油産業の姿となりました。この間、幾度となく転換期がありましたが、現在の構図は、国際大手石油会社(通称メジャーズ)、産油国(OPEC)、そして非OPECが、国際石油産業を動かす3大勢力となっています。

早くから資源開発を進めたメジャーズは、原油の探鉱から販売まで一貫した操業体制をしく、国際石油産業の代名詞でした。しかし、1960年のOPEC誕生により上流部門の支配力が弱まり、その勢力は後退します。

そして1974~83年の石油需要の激減により、徹底的な合理化を余儀なくされ、さらに1998年から2000年にかけてメジャーズ各社はM&A戦略に着手し、多国籍企業としての活力を回復させ、日本国内の下流部門にも進出しています。

OPEC(石油輸出国機構)は1960年に、メジャーズに対し自国の石油資源における主権を主張して設立されました。OPEC諸国による油田の国有化が進むと、原油の価格、供給の面から国際石油市場の構造は大きく変わりました。またOPECは近年、消費国の下流部門にも積極的に進出を進めており、メジャーズと並んで、上流、下流の一貫体制を確立しつつあります。東南アジアヘの進出も進行中で、日本でも、昭和シェル石油がサウジアラビアから、コスモ石油がUAEのアブダビ首長国から出資を受けています。

非OPECは、OPEC諸国の石油価格の高騰政策とメジャーズのOPEC離れを背景に、次第に開発力を高め、原油実勢価格の低下傾向をもたらす役割を果たしてきました。

とくに、南アメリカでの原油増産は、米国の原油調達を中近東から南米に変化させ、結果、中近東原油がアジアに向き、アジアの原油確保に寄与することになっています。

しかし中国の石油輸入国への転換、各国の不透明性等から、非OPEC諸国の原油生産能力は、頭打ちとなりました。また数年前から、両者の対話関係が生まれ、石油市場の価格動向も両者で話し合われています。

≪国際石油企業の動向≫

スーパーメジャー化した国際石油企業

●大型の企業合併・買収で世界地図が塗り変わった。

●スーパーメジャーもOPEC、非OPECを加えた3極体制の一角にすぎない。

<セブンシスターズ体制の崩壊>

海外の石油事情は、企業合併・買収(M&A)の視点をはずしては語れません。大型のM&Aが活発に行なわれた結果、1973年時点において自由世界の原油供給量の約65%を占めるなど主導的な立場にあったエクソン、モービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、ガルフ、ソーカル、BP、テキサコのセブンシスターズ体制は崩壊し、現在はエクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、シェブロン、トタールのスーパーメジャーと呼ばれる体制に移っています。

海外における大手国際石油会社のM&Aの変遷を整理すると、大きく変化していることがわかるでしょう。

<世界石油市場は3極体制へ>

経済のグローバル化や市場支配をめざす世界的な大型合併の流れを背景に、海外の石油産業においても、メジャークラスの企業が積極的で戦略的なM&Aを行なわなければ生き残れないほど、厳しい競争時代に突入しています。20世紀初頭のスタンダードオイルによる独占の時代から100年、M&Aを繰り返して誕生したスーパーメジャーも、現在では世界の全原油生産量のうち10%を握るにすぎません。世界石油市場は、OPEC、非OPEC、スーパーメジャーによる3極体制に移行したのです。

メジャーの再編は各社の企業体質の強化に貢献したものの、膨大な資金が企業買収や油田の買収、天然ガスや燃料電池など次世代エネルギー開発に投資されたこともあり、新規油田開発が抑制されているのが現状です。

海外におけるこれらの大型石油会社のM&Aの影響は日本にも及び、わが国に12社あった元売は、現在5グループに再編されつつあります。

巨大化したスーパーメジャーといえども厳しい競争環境におかれており、石油資源枯渇問題、地球環境対策としての新燃料、代替エネルギーの開発と、人類の未来を切りひらくために、旧来の石油企業から新エネルギー総合企業への転換が求められています。

エナルギー問題に見る日本の皮算用とアメリカの思惑


アメリカは原則、自由貿易協定(FTA)締結国にしか液化天然ガス(LNG)輸出を許可していない。非FTA国にも輸出が認められた最初のケースとなったのが、シェニエール・エナジー社が持つ年間1600万トン分のLNGだ。現在2016年の輸出開始を目指して、ルイジアナ州サビーンパスに年間約400万トンの天然ガス液化設備4系統の建設を進めている。

11年後半、その分のLNG輸出枠が売りに出された。しかし、契約を結んだのは欧州、インド、韓国のガス会社だった。価格はアメリカの天然ガス市場価格で決まるため、液化費用、船賃を含めても10ドル程度。日本のLNG価格より7~8ドルも安い。「韓国よりも前に日本の企業と交渉はしていました。ただ、石油連動価格でしか天然ガスを購入したことがない日本企業は、天然ガス需給で価格が決まる売買契約に躊躇したのではないでしょうか」と、シェニエール社のアンドリュー・ウェアさんは指摘する。シェニエール社はサビーンパスに続いて17年にはテキサス州でも年1350万トンのLNGターミナルの稼働を目指している。

日本企業も手をこまぬいて見ているわけではない。12年7月、中部電力と大阪ガスは、テキサス州でLNG受け入れ施設を保有・運営するフリーポート社の子会社(以下、フリーポート社)と、天然ガスの液化加工契約を締結した。2社はアメリカで直接天然ガスを購入して、フリーポート社が建設予定の液化設備を使用して、年440万トンのLNGをアメリカから輸出することが可能になる。

フリーポート社はLNG輸入のため、05年から大型タンカーが接岸できる埠頭やガス化設備などを建設した。08年に稼働を開始したが、国内でシェールガスの生産が急増したため、LNG輸入が減少。そこで輸出施設への転換を図ろうとした。ほぼ同じタイミングで輸入から輸出に舵を切ったシェニエール社のウェアさんも「最初は、『何をクレイジーなことを考えているんだ』と散々に言われましたが、今では 『グッドアイディアだ』と周囲の反応が激変しました」と話す。

フリーポート社のLNG輸出の最大のネックは100億ドルもの液化設備の建設コスト。事業化のためにも液化設備の顧客として中部電力と大阪ガスとの契約は必須だった。米国より5~6倍高い価格でLNGを「高値掴み」させられている日本にとって、安価なLNGは喉から手が出るほど欲しい。12月5日には非FTA国への輸出の許可権限を持つ米エネルギー省(DOE)が「いかなる仮定においても、LNG輸出はアメリカ経済にとってプラスである」と結論付ける報告書を発表した。

これを受けて、日本でも米国産LNG輸入への期待が高まっている。とりわけ1番早く申請して、輸出許可が下りたシェニエール社のサビーンパスに続き、申請順位2番目のフリーポート社に許可が下りる可能性が最も高い。フリーポート社のゼデニック・ゲリックさんも「中部電力と大阪ガスという顧客を確保していることは、輸出許可の後押しになる」と説明する。

ただし輸出量については限定的だ。ガス生産者にとっては国内だけに閉じられていれば飽和するので新しい売り先(輸出)を作って価格も上げたい。一方、化学メーカーなど使用者側にとっては、安い原料を使い続けたい。折り合いの付いた所で輸出量が決まる。

アメリカの有識者や関係者の意見を集約すると、DOEに申請されている15件以上の輸出計画について、「実際には3~4件ぐらいだろう」という意見が多かった。仮に許可が出たとしても、LNGターミナルの稼働までには数年はかかる。フリーポート社の計画でも商用稼働は17年9月と5年後の話だ。原発が停止して緊急に火力発電用のLNGが必要になった日本にとって、安価なアメリカ産ガスの輸出許可が、すぐに貿易赤字削減に役立つわけではなさそうだ。だが、新たな輸入先の確保は、カタールやマレーシアなど既存の輸出国に対する価格交渉力を高めることにつながるだろう。

日本では安いLNGを買うということが「シェール革命」の焦点としてみなされている傾向が強いが、アメリカにとってLNG輸出は、新たに手にした外交カードの1つに過ぎない。

例えば化学産業。需要が飽和状態にあり、国際競争力も高いとは言えない日本のエチレンプラントは「現状の15基から10基程度に設備を減らさなければならない」(業界関係者)という状況にある。ところが、米ダウ・ケミカルは12年4月、テキサス州においてエチレンプラントの新設を発表した。日本では輸入した原油をナフサにしてエチレンを生産するが、アメリは天然ガスを原料にしてきた。シェールガスのおかげでこれまで以上に安い原料でエチレンを生産できるようになる。この他にも、各業界で安いガス利用を狙った新規プロジェクトが計画されている

この安い天然ガスを利用するべく環境整備が進めば、中国とは違いカントリーリスクの低いアメリカは製造業にとって絶好の生産現場になる。そうすると、日本の製造業が、アメリカに向けて拠点を移すということもありえない話ではない。

アメリカがエネルギーの自給を達成することについて、田中伸男国際エネルギー機関(IEA)前事務局長(現日本エネルギー経済研究所特別顧問)は「アメリカの貿易赤字の6割がエネルギー輸入によるものです。それがなくなるのですから、個人消費の伸びや他部門への投資などインパクトが大きいでしょう」と話す。消費市場としてもアメリカの魅力が一段と高まるということだ。地政学的にも大きな影響を与える。アメリカがエネルギーの自給を達成すれば、中東への関与を減らすのではないかという懸念がある。中東情勢が悪化すれば9割の石油・ガスを同地域に頼る日本にとっては致命的な問題になる。だが「アメリカ一国のエネルギーの独立と世界経済は別物」だという。中東からのエネルギー資源の輸出が止まれば、世界経済が悪化し、アメリカ経済もそれからは免れないからだ。確かにその通りだが、日本の商社関係者は、石油メジャーの社長からこんな話を聞いたという。「シェールのおかけで、中東で死ぬアメリカの若者(兵士)は減るはずだ」。アメリカが中東から手を引くことはないだろうが、関与の度合いを変えてくることもないとはいえない。

アメリカは9・11以降、3兆ドルもの戦費を費やし、中東の安定を維持している。前出のヒューストン大学エドワード・ハーズ教授によると、中東から1バレルの原油を輸入するのに50ドルものコストをアメリカ国民が負担している計算になる。日本など、アメリカに中東の安定化を依存している国に対し、何らかの新たな負担や協力を求めてくる可能性がある。

アメリカのシェールオイル・ガス生産がピークに達するのは、20年頃と予測される。それまでにどのような変化が起こるのか、現時点で見通すことはできない。

それでも「アメリカの不動産は上がる」、「アメリカ株は絶対に買いだ」・・・・・・、日本では感じることのできない好況がやってくる雰囲気が確かにアメリカにはある。そして、それを誰よりも待ち望んでいるのは、他ならぬアメリカ人だ。アメリカが復権したとき、日本は魅力的なパートナーであり続けることができるのだろうか。

石油はどのように汲み上げられるのか?


《石油はどのように汲み上げられるの?》

― 岩石の孔隙中の石油をどう効率よく取り出すか ―

石油は岩石の孔隙中に存在しており、食器を洗うスポンジの中の水によく例えられます。決してプールに存在する水のようにある空間に満ち溢れているわけではありません。種類にもよりますが岩石の孔隙の割合は10~40%程度です。また、孔隙中の石油の割合も様々で、最低でも10%程度は水が含まれています。このような状況で石油を効率よく経済的に生産することは単純ではなく、油田の特性に応じ、計画を慎重に練る必要があります。

最も重要なのは石油を生産するための坑井をどこに何本掘るかです。少なすぎては石油を多く取り残しますし、多すぎては坑井を掘削するための費用がかさんで経済的に見合いません。もちろん、石油を含んでいる量が少ない地域・深度に掘削しても意味がありません。また、1本の坑井からできるだけ多くの石油を生産するため、油層部において水平方向に掘削するようなことも日常的になりました。

基本的に石油は油田のエネルギー(圧力)によって地表に噴出してきます(一次回収)が、坑井の周辺では大きな圧力の損失が起こるため、それを改善して油が流れやすくするように、酸(塩酸等)を圧入して、流路にあたる岩石の一部を溶かしたり、人工的に亀裂を生じさせたりすることもあります。また、非常に重質な石油の場合や生産される石油に水が混ざってきた場合には、全体の密度が大きくなるため、地表まで汲み上げることが困難になってきます。この場合には坑井内にポンプを設置して人工的に汲み上げる、あるいはガスを圧入して相対的な密度を小さくして噴出を促すようなことも行います。

残念ながら、このような努力・工夫にも関わらず、回収できる石油の量は全体の3分1程度です。即ち、3分2程度の石油は取り残されてしまうことになります。この取り残し分を回収するために、水、ガス、薬品等を圧入することがよく行われます。

基本的に石油は圧力によって地表に噴出してくるが、約3分2は取り残されてしまう。そのため、水、ガス、薬品等を圧入してこれを取り出す。

《水や微生物を使って石油を回収する》

石油の二・三次回収

油田が元々持っていた自然の圧力だけでは全体の量の3分2程度は取り残されてしまいます。この第一の要因は、生産が進むにつれて油田の油層圧力が低下してしまうことによるものです。即ち、地表まで石油を噴出させるエネルギーを失っていくことによるものです。そこでこの圧力を補うために、生産した石油の分だけ、逆に何かを油層に圧入する必要があります。ここでよく使われるのが、水や天然ガスです。特に水は比較的に安価に入手できることから広く利用されていますこのように人工的にエネルギーを加えることでさらに石油を生産することを二次回収と呼びます。

油田の性質によっては、圧力を維持するだけでは十分な石油の回収量を得ることができない場合もあります。例えば、石油の流動性(粘性)が極端に低い場合、加熱したり、ガスを混和させたりすることにより、流動性を改善します。前者についてはスチームの圧入、後者については二酸化炭素ガス(CO)や天然ガスの圧入がよく利用されています。また、油層中に存在する水が物理化学的な力(界面張力、毛細管圧力等)により油の動きを邪魔することも起こりえます。この場合は、界面活性剤等の薬品や微生物等を油層に圧入することによって改善が試みられます。このように、物理化学的な性質を変化させて石油を増産することを三次回収と呼んでいます。

最近では、油田の開発に際して地下に存在する量の内、地上に取り出せる量の割合を表す回収率の最大化を計るため、開発当初から二次回収法の適用を検討する例も増えています。回収率は油層内の油を坑井に向かって持続的に流動させる機構である排油機構や油層性状等によって大きく異なりますが、二・三次回収の適用により50%以上の回収率を達成できそうな油田も珍しくなくなりました。

●人工的にエネルギーを加えることでさらに石油を生産することを二次回収と呼び、物理化学的な性質を変化させて石油を増産することを三次回収と呼んでいる。表カナダ・ウェイバーン油田の生産量推移(背景無) (2)

原油基礎知識


<原油価格>

原油価格の代表的な指標にはこのWTI、欧州産の北海ブレント、中東産のドバイがあり、これらが世界の3大原油指標と言われています。

その中でも、WTI原油先物は、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性が高いため、原油価格の指標にとどまらず、世界経済の動向を占う重要な経済指標の1つにもなっています。

WTIの先物はウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、西テキサス地方で産出される硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油のことを指します。そのWTIの先物がニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されています。

 

<世界の石油消費と埋蔵量>

BP Statistical review 2008 をもとに、AFPがまとめた確認石油埋蔵量では、2007年末現在、中東が7553億バレルで最多、欧州/ユーラシアの1437億バレル、アフリカの1175億バレル、中東米1112億バレル、北米693億バレル、アジア太平洋408億バレル。

 

<バレル>

バレル(バーレル、barrel)とは、ヤード・ポンド法における体積を表す単位である。国際的に原油や各種の石油製品の計量はバレルで行われる。語源は「樽(たる)」である。

石油用のバレルは42米液量ガロンであり、正確に158.987294928リットルである。42ガロンのバレルは、元々はアメリカのペンシルベニア油田で始まったものである(42ガロンの鰊樽に石油を詰めて運んだため)。ペンシルベニア油田では42ワインガロン(ワインガロンは現在の米液量ガロンと同じもの)のバレルと40ウィスキーガロン(約151.4リットル)のバレルとが用いられていた。40ガロンのバレルの方が最初に普及したものであったが、1866年以降は42ガロンのバレルが標準とされた。石油は長年樽に入れて運ばれていたため、その名残で今日でも原油の計量と価格設定の単位にバレルが使われているのである。

 

<世界の石油消費> 2007年調べ

北米25.024億バレル、中東米5.493億バレル、ユーラシア大陸20.100億バレル、アジア・太平洋25.444億バレル

 

<原油先物価格WTIとは?>

WTI、原油のニュースで耳にするけど?

WTIとは、世界的に注目される原油価格の指標で、ウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略です。ニューヨークのマーカンタイル(商品)取引所(NYMEX)で取引されている、原油価格の先物です。この先物の動きが世界的に原油価格の指標として注目されているため、原油価格のニュースなどで取り上げられているという事なのです。

WTIは米国テキサス州で産出される原油でガソリンを多く取り出せる硫黄分が少ないので、品質が高く人気があります。暖房の燃料やジェット燃料などにも使われる付加価値の高い上質の原油です。

そのため、WTIは原油価格の先物取引の1つであるものの、それだけに留まらずに、原油価格の代名詞とも言ってよく、さらに世界経済の重要な経済指標の1つという位置づけにもなっているのです。これを先物取引の原油商品として売買する市場としては、ニューヨーク・マーカンタイル取引所の他に、北海原油を標準とするロンドン国際原油取引所(IPE)、中東ドバイ産原油を標準とする東京工業品取引所(TOCOM)があります。

 

<ニュースでよく言う原油価格とは?>

一般にニュースなどで「1バレル=○○ドル」などと伝えられている原油価格とは、実際の原油を購入する際のスポット価格のことを言っているのではありません。先物の原油価格のことなのです。先物取引とは前述のとおりバーチャルの取引で、実際にほとんどのケースでは原油そのものをやり取りするわけではありません。原油価格としてニュースで伝えられている価格は、一般にニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTIという先物価格のことなのです。先物取引には実際の買い物だけではなくバーチャルな投機的な資金が入ってくるために未来の原油需要以上の影響が価格を大きく動かします。現在では新興国の発展に伴う、原油の需要も確かに高いのですが、それ以上に投機資金による原油価格の変動も大きいのが現状です。現在の原油価格高等は投機資金の対策として原油が注目されていることが背景の1つです。今後、原油に代わる投機資金の魅力的な運用先が出てくるようなら、少しは原油価格の高等が抑えられることにもなるかもしれません。

 

<なぜガソリン価格が上昇したのか>

今、ガソリン価格がなぜ下落したのか?を知るには、まずなぜガソリン価格が上昇したかを知る必要がある。これはひとえにガソリンを作る元となる原油が値上がりしたから。では原油が値上がりした理由はなんだろうか。いくつかの理由が考えられるが、おおよそ次のような複数の理由が重なって大きく値上げしたと考えれば良いと思う。

・中国やインドなどの中興国の消費増大

・オリンピック需要

・生産国の政情不安定化による供給量減少

サブプライムローン問題などで景気が怪しくなってきた株式市場から逃げた投資マネーが商品先物市場に流れ込み、それらが先物先導で値を吊り上げた。

 

特にここ1、2年の間の価格急騰は一番最後の原因に寄るところが大きい。実際2007年70ドル前後だったのが、同年12月には100ドルまで達しており他の要因ではここまで急な値上がりはしない。上から3つまでの理由も投機マネーによる買い付け、価格上昇を裏付ける理由になるのだから始末が悪い(つまり中国やインドの需要が伸びるらしい=原油のニーズが高まる奪い合いになる値が吊り上がるだろう。ならば先手を打って、買っておけば儲かるという理由付けが出来る)。

 

<なぜガソリン価格が下落したのか?>

上昇理由を考えれば下落理由も自ら分かるというもの。似たようなスタイルで並べていくと次のようになる。

・オリンピックの集結による特需打ち止め

・ガソリン価格高騰に対する買い控えで需給のバランスが崩れた

・世界的な景気後退による節約志向の高まり。それに伴う原油商品の消費量減少

・商品先物市場の規制強化

商品先物を取り扱っているファンドなど下の契約解除や株式などの損失を穴埋めするために現金が必要となったための換金化

 

値段が割高になれば消費量を抑えようというのは世の常。ガソリン価格が高等したことで自動車の利用を控えたり自動車そのものを売り払ったり、燃費の良い車両に買い換えるなど、ガソリンの消費そのものが抑えられる傾向が強まった。

先物市場で大暴れをした原油価格過去最高値147ドル。ガソリンでリッター200円。単にガソリン高だけでなく景気そのものが悪化することでガソリン消費が減少し需給バランスが崩れていく。

現在は「本来の姿」に戻りつつあるわけだ。原油価格の今後は、下は70ドル、上は150ドルというブローカーのコメントが寄せられている。「受給による純粋な原油価格は80ドル前後」という話も語られていた。

ここに面白いニュースがあったので紹介します。

国際エネルギー機関が原油価格243ドルの衝撃的予想を発表!

日本ではあまりニュースになっていませんが国際エネルギー機関(IEA)は2010年11月9日2035年までのエネルギー需給を予測した「世界エネルギー未投資2010」を発表しました。この予測によると世界の一次エネルギー需要は2035年に2008年比で「+36%」増加し、その需要増分の大半を新興国が占めると予測されています。

実際に中国の原油純輸入量が毎年激増している状況を見ると、この予想は整合性がありそうです。そして2035年になってもエネルギーの大半は化石燃料であり、風力・太陽光などの新エネルギーが全エネルギーに占める割合は数ポイント現在より上がる程度です。結論的に政策が現状維持で推移すると、2035年時点の原油価格は1バレル=243.8ドルという衝撃的な予想となっているのです。実際のところ、IEAのこの超長期の予想とは別に、米国の追加金融緩和策によって資源価格は後押しされており、原油価格も最近では25ヶ月ぶりの高値を取ってきています(ただし現在は若干調整しています)。

原油価格は金融危機後にダブルボトムを打ってから2009年に反発後長らく値固めしてきました。どちらかというと貴金属や農作物が先に高値を更新していったのに比べ、ここまでの推移は穏やかです。現在は最後の売り圧力を振り切り、高値を伺おうとしている現状ですが90ドルラインは過去の節目とも一致する重要な線となります。

移動平均線も200日線、50日線が絡み合っており、ここを突破すると強力な上昇トレンドを形成する可能性があります。実際のところ、これまでも商品相場は謹賀まず先に動いてから原油へと移ったことが何度かあります。米国は積極的な金融緩和先を採っていますが、金融危機で負ったダメージは想像以上に大きく負い、それと景気は回復しそうにありません。つまり緩和策は未だ続くということです。そうなれば大量のドルが、ばら撒かれますから、ドル安になります。ドルと商品は反相関関係にありますので、商品価格は長期的な超勢として上昇して行く方向にあると思います。となれば、原油価格は今後上昇していく可能性は高いと考えます。原油価格の上昇はガソリン価格の上昇など、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。石油関連製品の上昇に耐えられるように、原油株を買うなど、石油価格の上昇で資産が拡大する仕組みを作っておくことは1つの生活防衛策でもあると思います。

先日、QE3 金融緩和3回目です。効果が上がるまで、米国は金融緩和をやり続けます。そろそろ効果が上がることを考えれば、商品相場が上がると思います。まず金相場が上がってきました。昨年高値1900ドルから1500ドルまで下落した金相場。現在1800ドル。原油も現在80ドル台と昨今の脱原発日本だけでなく、全世界的になっていることを思うと価格の上昇はさけられないと私は思います。

 

<石油需給ファンダメンタルズ>

昨今の石油価格の上昇は様々な要因が複合的に作用することによって、引き起こされています。その中出も最も大きな要因として挙げられるのが、世界の石油需給の逼迫です。1991年から2000年までの10年間の平均経済成長率が3.4%であったのに対し、2003年以降は4%を超える経済成長が続いており、歴史的に見ても世界経済が非常に好調な状態を維持していることが分かります。そして、この好調な経済を背景に世界の原油需要も増え続けています。経済活動が活発になれば製造業を始めとする、産業用や電力用の燃費としての石油需要が増え、また、物流や人の移動が多くなり、輸送用の燃料としても石油の需要が増加することになるからです。世界の石油需要の動向で地域別に特にアジア太平洋と北米地域を中心に石油需要が堅調に伸び続けてきていることです。とりわけ、この世界の石油需要増大の牽引役とも言えるのが中国と米国です。

1991年から2000年までの主要国における(G.7.・BRICs国)世界の需要増加分(1691万バレル/日)中国と米国で(880万バレル/日)は同期間の増加分のほぼ半分に相当します。このような需要の増大が続く一方で供給面では、石油の余剰生産能力は長期的に縮小傾向にあります。

OPECが保有する余剰生産能力は1980年から1990年代にかけ、大きく縮小し、2000年代に入っても300~400万バレル/日程度の水準で推移し続けています。石油生産面での余力の低下と併せて、石油精製の面での余力の低下も進んでいます。また、石油需要が増加する反面、世界の石油依存はますます中東依存度を高めています。1991年から2006年にかけての、地域別の石油生産量を見ても需要側では先に書きましたが、アジア太平洋と北米地域において大きく伸びましたが、供給側ではこの地域における生産量の伸びは大きくなく、それ以外の地域における増産によって、需要の増加が賄われてきたことが分かります。北米欧州といった、いわゆる先進国地域での生産量が減退ないし伸び悩みの傾向で、それに対し、ロシアと中東、アフリカからの供給増が圧倒的に大きくなっています。このような傾向は今後も続くとみられており、世界の原油供給における、中東、アフリカ、ロシア地域への依存度はこれからも高まっていくことが確実視されています。

これらの地域の石油は、大半が国営企業の管理下にあり、市場ニーズに応じた柔軟な投資環境整備が求められています。このように石油需要全体が増加する反面、供給制約が益々高まることが見込まれますが、地球環境問題への関心の高まりから、石油製品における硫黄分などの成分に対する規制も世界的に厳しくなる方向にあります。

このような石油製品の高品質化、軽質化が進む一方で、世界の産出原油は重質化する傾向が見られます。石油製品の需要構成からはより軽質から高品質な原油が必要とされているのに対し、世界の産出原油はより重質かつ品質が劣る原油の比率が大きくなっていくという現状が存在するということです。今後このようなことを解消していくためには重質の原油を軽質の原油製品へと精製することのできる、高度化精製装置への投資が必要になります。従って、そのような精製部門での装置対応が今後順調に進んでいくかどうかという点も今後の石油製品の重要なポイントになります。

増大する世界の石油需要に見合った供給を確保するためには、現在生産を行っている油田の生産減退分も補った上での増加を進めていかなければならない為、新規の生産能力増強自体は、これからの需要増加分以上の水準を達成していかなければなりません。また、近年大規模油田の発見がなされていないため、今後の生産能力の増強は現在生産を行っている油田よりも小規模の油田を数多く開発していかなければならず、より多額の投資が必要となります。

今後、低コストで生産できる油田開発が可能な投資が行われる必要があります。低コストで生産できる油田地域はサウジアラビアやイラン、イラクといったOPEC産油田に集中していますが、例えば、イラクやイランなどにおいてはそれぞれ国内政情や国際政治面での緊張の高まりから投資が進められていないのが現状です。

需給の逼迫と併せて近年の原油価格高騰の大きな要因となっているのが「地政学的リスク」です。この地政学的リスクという言葉は、様々な文脈で用いられていますが、一般的には「戦争や内乱、油田国有化のように政治的な事象によって引き起こされるものであり、かつ比較的短期に油田供給を減少させる可能が懸念されるリスク」を指すものとして使われます。地政学的リスクが中東地域のみならず、アフリカ最大の産油国であるナイジェリア、南米最大の産油国であるベネズエラなど地理的にも広範囲に亘り、かつ同時にその深刻さの度合いを増してきている点が挙げられます

中東においては、2003年のイラク戦争以降、若干の治安情勢の改善は見られているものの、現在のマリキ政権が依然として国内の各宗派間での対立を十分に生後しているとは言い切れず、今後も本質的には不安定な政情が続くものと考えられます。2007年後半に顕在化したトルコ国境付近における緊張関係も今後の動向次第では新たな軍事的な衝突に繋がる懸念も拭いきれていません。イランについても2007年米国政府がイランの核兵器開発は2003年以降停止されたが、いらんが少なくとも核兵器を開発する選択肢を維持し続けているとの評価を行いました。イラン国内では引き続きウラン濃縮関連活動は続けられており、欧米諸国との緊張関係が続いています。

ここにまた面白いニュースがあったので紹介します。上記と重複しますが「2012年3月21日AFP」国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は20日、イラン産原油の供給が断たれると、原油価格は最大30%上昇する可能性があり、世界経済の「深刻なリスク」になる恐れがあると述べた。

世界第2の産油国であるイランは核兵器開発疑惑をめぐって、西側諸国と対立しており、現状次第で原油価格が急上昇する恐れがあるとみられている。中国訪問に続いてインド入りしていたラガルド専務理事はインド訪問を終えるにあたって、ニューデリーで記者会見し「イランの原油輸出量が大幅に減少した場合、世界経済への打撃は明らかに大きく、当分の間、原油価格の上昇を招くだろう」と述べた。IMFはイラン産原油の供給が停止した場合、原油価格は20~30%上昇すると試算していると語った。同専務理事は、原油価格の指標となっているブレンド原油1バレル125ドルから急激に上昇すると、ほかの産油国が穴埋めできるようになるまでは、「世界経済に深刻な影響があるだろう」と述べた。

今まで原油価格の仕組み、流れ、トレンドといろいろ述べてまいりましたが、原油価格は適正価格に近づいてきたと私は思います。今後の価格の動きを楽しみに見ていきたいと思います。